ギリシャ、パロス島の石積みの家の続きです。
パロス島で、縁あって実際滞在していたのはこちらの家です。アメリカ人の女性が、崩れかけた石積みの家を一人で直して造ったという、ここも今の信州の石積みの家の"種"みたいな存在です。
ただその時、そこに住んでいたのはその女性ではなく、レバノン生まれのギリシャ人の男性でした。たまたま知り合った我々をしばらくここに泊めて世話してくれました。こっちの家はシャワーも水洗トイレもあります。
見えているドアは玄関ドアで、入るといきなり階段でちょっと下がったところが、床になっていました。玄関に立つと、家の中がすり鉢上に見える感じでしょうか。とにかくまず平らにしてから家を建てるのが常識のような感じがしますが、外国や多分昔の日本にも、初めの土地となりに家のフロアをつなげていったような造りがたくさんあって、逆バリアフリー仕様なのが、断然おもしろかったりします。確か2段下がって、キッチンフロア、さらに2段下がってリビングのフロアとか、そういう造りだったと思います。
低く見えている窓のところは大きなダイニングテーブルがあって、食事をしながら外が見れます。そのすぐ上に小さい窓がもう一つあいているのは、ダイニングの天井がロフトベッドになっていてそのベッドの脇に開いた窓です。このアイディアは今進行中の石積みの家に採用しています。低いダイニングの天井はとても落ち着くものでしたし、その上のベッドも、面白いつくりで、小さい家を有効に使っている印象でした。
ほとんど、切れるようにしか写っていませんが、手前の下にタオルが干してあります。これも家の前の木と木の間に張ったロープの洗濯物です。
そして、これが、玄関を入ってすぐ右手にあったキッチン。単身者向け、1.5畳といった広さというか狭さ。ここでちゃっかりお茶など入れさせてもらってます。
小さい冷蔵庫がありますが、やっぱり物はありません。
この小さなキッチンで私が感動したのは、なんとここのシンク、水が流せない!!!もちろん問題は浄化槽にあって、修理しなくてはいけないということらしいのですが、水が流せない!キッチンですよ、水が流せないんですよ!
それで、どうしているのかというと大きな鍋に排水をためて、一杯になるたびに外に捨てに行くんです・・・・信じられない・・・そういえば、古い古いヨーロッパの建物にはそんないろんな不都合も普通でした。全然、良いことでも、嬉しくもないでしょうが、その不便さをある意味受け入れて、納得づくで生活しているというのが、むしろ感動でした。
しかも、ここの住人の彼は、この面倒な事をめんどうと言いつつも、このキッチンで作ってくれる料理はもちろん手作りで、とてもおいしく、しかもチョコレートケーキなんかも焼いてくれるのです。水の流せないキッチンで・・・・まさに、どんなキッチンかでなく、何を作るかがキッチンの価値という原点を感じました。確かに、薪のかまどひとつと、石臼ひとつ、みたいなところから幻のような料理が出た記憶があります。冷蔵庫のないところの食材は、むしろ新鮮さでは優っているという考え方もできるような気がします。
2011/8/24 住民B